【前編】白ナンバー事業者必見!「安全運転管理者制度」徹底解説

2022年4月1日から道路交通法規則の改正で施行された「白ナンバー事業者のアルコールチェック義務化」に伴い、注目が高まっている「安全運転管理者業務」について、前編・後編に分けて現役弁護士が解説してまいります。前編では、安全運転管理者業務の内容について解説いたします。

ジェネクスト株式会社 取締役CLO
川崎武蔵小杉法律事務所
弁護士 橋本 信行

 2022年4月1日から道路交通法規則の改正が施行され,「白ナンバー事業者のアルコールチェック義務化」が実施されました。運行管理に対する法令遵守,コンプライアンスシステムの構築が強く求められる時代が到来しました。
もしかすると,社用車業務に関わる多くの皆様が,「安全運転と引き換えに,日頃の仕事のやり方が窮屈になってきている」と感じていらっしゃるのではないかと思います。
では,どのようにすれば,それを解決できるのでしょうか。その答えは,「簡単に」,「業務内容を見える化(可視化)」することだと感じています。

ここで,まず,安全運転管理者制度,及び安全運転管理者の義務について,改めて確認したいと思います。

安全運転管理者とは,道路交通法(道交法)74条及びこれに関連する施行規則に規定のあるもので,一定の車両を保持している車両使用者に選任義務があることは皆様もご存じのとおりです。緑ナンバーの車両使用者であれば運行管理者を選任しますが,白ナンバーの車両使用者であっても,従業員に対して安全運転をさせ,安全に車両を運行すべきことに変わりはないため,選任が義務づけられているものです。

今般,改正による「アルコールチェック義務化」が取り沙汰されているようですが,実際には,安全運転管理者には,改正前から酒気帯びの有無を確認する義務はあったのです。また,今般の改正で安全運転管理者制度自体の存在が注目されることになりましたが,もともと一定の車両使用者には義務が課されていたことを忘れてはなりません。
以下,安全運転管理者には,これだけの義務がありますので,この機会に再確認してください。道路交通法施行規則第9条の10に規定があり,以下はその1号から9号です。

【1】運転者の適性の把握(第1号)
これは,自動車の運転に関する運転者の適性、技能及び知識並びに道路交通法や命令の規定並びに道路交通法の規定に基づく処分の運転者の遵守状況を把握する措置を講ずることです。

【2】運行計画の作成(第2号)
これは,最高速度違反、過積載運転、過労運転及び放置駐車違反の防止など安全運転の確保に留意した運行計画を作成することです。

【3】危険防止のための交替運転者の配置(第3号)
これは,運転者が長距離運転や夜間運転に従事する場合であって、疲労等により安全な運転が継続できないおそれがあるときには、あらかじめ交替運転手を配置することです。

【4】異常気象時の安全運転の確保(第4号)
これは,異常気象、天災等により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、運転者に対する必要な指示をするとともに、安全運転を確保するための措置を講ずることです。

【5】点呼・日常点検による安全運転の確保(第5号)
これは,運転しようとする運転者に対して点呼を行う等により、日常点検を実施させるとともに、飲酒、過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれがないか確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えることです。

【6】酒気帯びの有無の確認(第6号)
これは,運転前後の運転者に対して、運転者の状態を目視等で確認することで、酒気帯びの有無を確認することです。なお,令和4年10月1日からは、運転前後の運転者に対して、運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(国家公安委員会が定めるもの)を用いて確認することが加わりました。これは当分の間適用しないこととなっていましたが,令和5年12月1日からは猶予が解かれ,適用されることが発表されました。よって,すぐにでも対策を講じる必要があります。

【7】記録の保存並びにアルコール検知器の常時有効保持(第7号)
これは,酒気帯びの確認の内容を記録し、その記録を1年間保存することです。

【8】運転日誌の備付けと記録(第8号)
これは,運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転距離その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させることです。

【9】運転者の安全運転指導(第9号)
これは,運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識など安全運転を確保するため必要な事項について指導を行うことです。

以上のように安全運転管理者は,車両の運行について広範な義務を負っています。このうち,今般の改正により,【6】【7】についての義務が追加ないし加重されたことになります。
つまり,アルコールチェック義務化は,あくまでも安全運転管理者業務項目に2つ追加されただけに過ぎず,もともとこれだけの義務を負っていたのです。今回話題になったアルコールチェックはもちろん重要ですが,安全運転管理者の義務としてはそれだけをしていればよい,というわけではありません。むしろ,あまり知られておらず,いままで多くの車両使用者がこれらの義務を果たしてこなかったのです。
 これからは,改正を機に,他の項目についても行われているか,関係省庁からの積極的なチェックが入る可能性も否定できません。

 

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