アルコールチェック義務化Q&A/弁護士から見た交通安全

2022年4月1日から道路交通法規則の改正で施行された「白ナンバー事業者のアルコールチェック義務化」について、全5回に渡って現役弁護士が解説してまいります。第3回は、アルコールチェック義務化についてよくある質問にお答えします。
※本記事は損保業界の動向・最新データを掲載する新日本保険新聞(損保版)2022年7月20号に掲載されたものの転載です。

ジェネクスト株式会社 取締役CLO
川崎武蔵小杉法律事務所
弁護士 橋本 信行

Q1.急な仕事(社有車による自社貨物の配送)の要請がありました。どうしても点呼が完了しない限り運転出発できないのでしょうか?また、許される事情はありますか?

いわゆる緊急避難(刑法37条参照)が成立するようなごく限られた場合には許されることもあると考えられます。しかしこれはほとんどの場合,生命や健康状態の重大な危機が迫っている場合以外に認められた例はほとんどありません。場面は少し異なりますが,救急車を呼ぶ代わりに無免許運転したという事案でさえ,緊急避難による免責が認められなかった例もあります。点呼義務違反のほうが無免許よりも軽微な違反ではありますが,上記のように考えると,やむを得ない事実ということで免責される可能性は,ほぼないといえるでしょう。

点呼を完了しないまま出発した場合,まずアルコールチェックの記録を残していないことがあとから判明しますし,その後に緊急避難的な事実を証明することも難しいと思われます。かといって,虚偽のチェック記録を残すことも違反となります。

厳しいようですが,慎重に考えるならば,点呼及びアルコールチェックを完了しないまま運転出発することは現実的でないといえるでしょう。

Q2.安全運転管理者が終日不在、また副安全管理者も不在時の時の確認はどうすればよいでしょうか?

そのような場合の方法も公式に示されてはおりません。しかし,緑ナンバーにおけるルールをヒントに検討を加えますと、次のように考えられます。

緑ナンバーの車両では運行管理者資格のある者を運行管理者として選任することが義務づけられていますが、実際の業務では一定程度,その補助者(基礎講習を修了して運輸支局に届け出た者)に,業務を行わせることができます。これになぞらえて言えば,白ナンバーの場合においても、安全運転管理者以外の者にアルコールチェックの業務を行わせることは禁止されないものと解されます。ただし,その場合でも,責任は安全運転管理者に帰属します。

とはいえ,普段、通常業務しか行っていない従業員に,こうした安全管理業務を突然行わせることは困難であり、不備を生じる元となると思われますので、チェック方法をマニュアル化し社内で共有しておくことが重要となってくるでしょう。

また,当該車両を使用している本拠地でなくても,たとえば別支店に所属する安全運転管理者が,立ち会いや画像上で確認できる場合には,そのようにして結果を報告させる方法も取ることができますし,対応の方法は様々であるといえます。

Q3.通勤のみに利用されているマイカーを管理する場合も、安全運転管理者の選任は必要ですか?また、マイカーを業務に利用している場合はどうなりますか?

参考として,ちょうど山形県庁のホームページのQ&Aに,この点が明記されています。
業務に使用せず個人が所有管理していて,通勤のみに使用している自動車であれば,安全運転管理者選任の前提となる車両台数の算定には含みません。他方,業務に使用する場合は自動車の名義に関係なく算定の台数に含みます。したがって,通勤のみに使用するマイカーについては規制の対象外といえます。他方で,マイカーであっても業務上使用していれば規制対象に含まれますので,注意が必要です。月に1,2回しか業務に使用しないマイカーなど,算定に含まれるかどうか微妙だと感じた場合には,算定に含んでおくか,適宜,警察署等に問い合わせて頂くのが無難と思われます。

Q4.目視による確認業務も行い,記録も残しましたが、アルコール検知器の不具合等で酒気帯びを見逃し、最悪,事故を起こした場合、責任の所在はどうなるのでしょうか?会社はどのような管理責任が問われますか?

本年10月から検知器の使用が義務付けられますが,検知器を正しい状態に保つということも明記されます。このため,検知器の故障により会社が責任を免れることは難しいといえます。逆に,通常の注意をしてもその故障を発見し得なかったというような場合には責任を免れ得るといえます。

たとえば,検知器自体を普段から粗雑に扱っていて,その結果壊れていたということであれば,端的に義務違反ということにしかなりません。とくに,酒気帯びでないのに酒気帯びと判定される形態の故障は気づきますが,酒気帯びを検知しないという故障は気づきにくいうえに,実際に酒気帯び運転となると許されません。このため,定期的に,実際にアルコールが検知されるかどうかも確認したほうが良いと思われます。

管理に関していうと,個人で購入したものを使用することは不適切であり,安全運転管理者が管理するもののみの使用が認められます。
これらの規定に違反して事故を起こした場合には,検知器の故障の見逃しの過失も含めて,会社が使用者責任を免れることは難しいです。

そして,運転車である従業員側の立場から見てみますと,自身が刑事責任を免れないのはもちろん,会社が上記のとおり使用者責任を負ったとしても,会社が賠償した金額については会社から求償請求されるおそれがあります。このように,会社と従業員の互いのリスクを考えると,従業員自身も,アルコール検知器のみに頼るのでなく,アルコールがまだ残っている自覚があるのであれば必ず自己申告し,仮に検知器が反応していないのであればそれも含めその場で必ず報告すべきといえます。

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