「うちはテレマティクスを導入していて、急ブレーキのアラートも少ないから安全運転ができているはずだ」
もし、貴社の車両管理においてこのように判断されているとしたら、そこには大きな死角があるかもしれません。
多くの企業が導入しているドライブレコーダーや車両管理システムは、急ブレーキや急ハンドルといった「車両の挙動（Gセンサー）」を検知基準にしています。しかし、重大事故につながるリスクのすべてが「急な挙動」を伴うわけではありません。
本記事では、従来の管理方法では見落とされがちな事故予備軍の存在と、真に事故を防ぐための交通違反検知の重要性について解説します。
目次
1．一般的な車両管理システムの落とし穴
現在、多くの企業で採用されている安全運転管理の指標は、「急ブレーキ」「急加速」「急ハンドル」の回数です。もちろん、これらを減らすことは「エコドライブ」や「荷崩れ防止」の観点からは非常に有効です。
しかし、「安全運転（事故を起こさない運転）」という観点ではどうでしょうか？
ここに、2人のドライバーがいるとします。
Aさん：慌てん坊で急ブレーキが多いが、一時停止や制限速度は必ず守る。
Bさん：運転操作は非常にスムーズで急ブレーキはゼロ。しかし、見通しの悪い交差点でも一時停止せず、常に制限速度を20kmオーバーしている。
従来のGセンサー型のシステムでは、Aさんは「危険運転」、Bさんは「優良ドライバー」と判定されます。 しかし、実際に重大事故を起こすリスクが高いのは、明らかに法令を無視しているBさんです。
丁寧な運転だけど、ルールを守らない。
このGセンサーでは検知できない死角にこそ、企業の重大なリスクが潜んでいます。
2．重大事故の原因は「操作ミス」より「法令違反」
警察庁が発表する交通事故統計や過去の事例を見ても、死亡事故や重傷事故などの重大事故の多くは、単なるハンドル操作のミス（操作不適）よりも、明確な交通違反（法令違反）が原因で発生しています。
特に企業にとって致命的なダメージとなる事故の多くは、以下の2つに起因します。
・一時停止不停止（出会い頭の衝突）
・最高速度違反（死亡事故率の上昇）
これらは、ドライバーが「急ブレーキ」を踏まなければ、一般的なドラレコでは記録に残らないことがほとんどです。
管理者が「何も通知が来ていないから安心だ」と思っている裏で、「一時停止をスルーして通過する習慣」が常態化している可能性があります。
挙動ではなくルール遵守を管理することこそが、コンプライアンス（法令順守）を重視する現代企業の車両管理には不可欠なのです。
3．データで見る違反常習者と事故発生率の相関関係
ハインリッヒの法則をご存知でしょうか。
「1件の重大事故の裏には、29件の軽微な事故と、300件のヒヤリ・ハットがある」という労働災害の経験則です。
これを交通安全に当てはめると、「1件の事故の裏には、数えきれないほどの『交通違反』がある」と言い換えることができます。
実際に、事故を起こしたドライバーの過去の運転データを分析すると、事故の直前だけでなく、日常的に「一時停止無視」や「速度超過」を繰り返していたケースが非常に多く見られます。 彼らは「運悪く事故に遭った」のではなく、「違反を繰り返すことで、自ら事故の確率を高めていた」のです。
① 最新統計でも「死亡事故」の最大の原因は違反
警察庁が発表した最新の統計（令和6年）※1によると、交通事故による死者数は2,663人と減少傾向にあるものの、依然として多くの尊い命が失われています。 特筆すべきは、死亡事故における「法令違反」の割合の高さです。 車両相互の事故において、最も多い原因は「安全運転義務違反」や「通行区分違反」などであり、日常的なルールの軽視が積み重なった結果です。
②「出会い頭」が事故類型のトップ
企業が最も警戒すべき事故形態は、「出会い頭衝突」で、車両相互事故の中で最も高い割合を占めています※1。
なぜ、見通しの良い道路や、慣れた通勤路で「出会い頭」の事故が起きるのでしょうか？ その主原因は「一時停止指定場所での不停止」や「減速不足」です。 Gセンサーが反応しないような「スルスルとした一時停止無視（ロールスルー）」を見逃すことは、事故全体の約3割を占める最大のリスクを放置することと同義なのです。
③ 統計が示す真実：「違反なし」の死亡事故はゼロ
「運が悪くて事故が起きた」という言葉を耳にすることがありますが、データはそれを否定しています。 警察庁の最新統計（令和6年）※1によると、自動車等の運転者（第1当事者）が起こした死亡事故 2,325件 のうち、法令違反がなかったケース（違反なし）は「0件」 でした。
つまり、死亡事故の100%において、ドライバーに何らかの「法令違反」があったということです。
内訳を見ると、漫然運転や脇見運転といった安全運転義務違反だけでなく、以下のような明確な違反も多くの命を奪っています。
最高速度違反： 114件
信号無視： 85件
一時不停止： 61件
これらは「うっかり」ではなく、明確なルール軽視です。 「小さな違反」を見逃すことは、事故の直接的な原因を放置することと同義です。だからこそ、社用車から「違反」をなくすことが、事故を防ぐ唯一かつ確実な方法なのです。
事故が発生してから「もっと指導しておけばよかった」と後悔しても、失われた信用やコスト（保険料、賠償金、車両修理費）は戻ってきません。事故を未然に防ぐためには、事故の「前兆」である交通違反を可視化し、事故が起きる前に指導する必要があります。
※1 出典：警察庁「令和6年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」より
4．違反を可視化し、ハードウェア不要で管理する
では、Gセンサーでは検知できない「一時停止無視」や「速度超過」を、どうやって管理すればよいのでしょうか？
これまでは管理者が同乗してチェックするしかありませんでしたが、現在はスマートフォンだけで交通違反を検知できる技術があります。
ジェネクストの「AI-Contact（アイ・コンタクト）」は、スマホの位置情報と全国の標識データを照合し、以下の違反を自動検知します。
・一時停止不停止
・最高速度違反
・踏切不停止 など
高価な専用車載器を取り付ける必要はなく、社用携帯やドライバーのスマホにアプリを入れるだけで導入可能です。
急挙動だけでなく交通ルールを守れているか。 この視点を取り入れることが、事故削減への最短ルートであり、企業のブランドを守るための最も確実な投資となります。
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