自動運転について解説!開発の動向と将来的な実現性とは?

2020年4月に施行された改正道路交通法により、自動運転の自動車(レベル3)が公道を走行できるようになりました。
現在の自動運転で実現されていることは何か、将来的にどこまで実現できるのか、自動車メーカーなどの動向を解説いたします。

1.自動運転とは?

自動運転とは、自動車内のシステムが作動して運転者に代わり運転操作を行うことを言います。
自動運転化レベルはレベル0からレベル5に分けられ、運転者が何もしなくていい完全自動運転はレベル5になります。
これはアメリカ自動車技術者協会(SAEインターナショナル)が策定した世界各国で採用されている自動運転の定義の区分です。
現在、日本は自動運転レベル3まで公道を走行できますが、高速道路での車線変更を伴わない時速60kmまでの低速走行時のみと限定的です。

 

2.日本の実証プロジェクト

自動運転化レベル4のサービス実現に向けて、国のプロジェクトでも複数の走行環境の実証実験が実施されています。
日本国内の実証事例はレベル4を目指していますが、公道においては遠隔操作・監視ありまたは保安運転手同乗でのレベル2の運行が行われているのが現状です。
(参考:国土交通省自動車局長、経済産業省製造産業局長主催、自動走行ビジネス検討会)

事例① BRT、基幹バスサービス

茨城県日立市の廃線跡を活用したバス専用道「ひたちBRT」の一部路線で小型自動運転バスでの実証実験を2018年から実施。
2019年には中型自動運転バス実証へ発展させ、中型バス開発とともにひたちBRT以外の様々な走行環境の地域を選定して実証実験を継続しています。
このうち福岡県北九州市・苅田で2019年2月から約1か月行った小型自動運転バスのプレ実証は無事故で終了し、この実証の評価結果を2020年10月からの中型自動運転バス実証へ反映予定です。
【参考:https://www.pref.ibaraki.jp/kikaku/kotsuseisaku/chiikikoutsu/hitachi-jidouunnten.html

事例② トラック幹線運輸サービス

新東名高速道路の一部区間で、後続車無人隊列走行技術の確立に向けた実証実験を2018年度から実施。
2020年3月にソフトバンク、WCP(Wireless City Planning)が5Gの車両間通信を活用して、車間距離10mのトラック隊列走行に成功したと発表しています。

事例③ 小型モビリティ移動サービス

国土交通省道路局、内閣府SIPは、高齢化が進む中山間地域での人流・物流を確保するために生活に必要なサービスが集積しつつある「道の駅」などを拠点として自動運転サービスの実証実験を2017年度から全国18か所で実施。
2019年11月から秋田県の道の駅「かみこあに」で、実証実験を踏まえた社会実装を開始しています。
自動運転車の愛称は「こあにカー」といい、上小阿仁(かみこあに)村以外の方も利用できます。
【参考:道の駅「かみこあに」を拠点とした自動運転サービス http://kamikoani-ac-nk.jp/

 

3.自動運転技術開発の動向

世界各国の自動車メーカーなどが自動運転技術の開発競争をしています。
複数のメーカーやサプライヤーなどが協業しながら、研究開発が進められており、多くの企業が自動運転化レベル3以上の実証実験を進めています。
そのうちのいくつかをご紹介します。

トヨタ自動車(日本)

「トヨタガーディアン(高度安全運転支援システム)」と「トヨタショーファー(自動運転システム)」の2種類のアプローチで自動運転システムを開発しています。
2019年1月に発表されたTRI-P4はガーディアンとショーファーが搭載され、MaaS(mobility as a service)分野における自動運転レベル4相当です。

・ウェイモ(アメリカ)

アメリカのグーグル系自動運転開発企業ウェイモは2020年10月にアリゾナ州で無人の自動運転タクシーを一般向けに提供開始しました。
全体の5~10%の車両が無人の自動運転となり、NDAに同意した少数のユーザーだけが無人の自動運転タクシーを利用できるようです。

・ゼネラル・モーターズ(アメリカ)

2020年9月に日本のホンダと協業。
また、2020年1月には無人運転で走行するシェアリングサービス用の電気自動車(EV)「クルーズ オリジン」を披露しました。車両の設計にはホンダも関わっています。
しかし、ゼネラル・モーターズは自動運転車の商用化の計画を遅らせており、「クルーズ オリジン」の商用化時期についても未定となっています。

・ダイムラー(ドイツ)

ボッシュ、エヌビディアと協業。
2019年12月にボッシュと共同でアメリカ・カルフォルニア州サンノゼにて自動運転タクシーの公道試験を開始しました。
ダイムラーの高級車部門メルセデス・ベンツのセダン30台で配車サービスを提供しており、緊急対応のための保安運転手が常に同乗します。
2024年に発売予定の自動運転のメルセデス・ベンツの車にエヌビディアと共同開発した自動運転用ソフトを搭載すると発表しています。

上記以外にも様々な企業が自動車の自動運転化を目指し、商用化に向けて取り組んでいます。

 

4.自動運転はどこまで実現できるのか?

4-1.自動運転実現のための課題

①法整備

自動運転実現に必要不可欠な課題として法整備の問題があります。
実はこの法整備、世界各国が独自の基準で法律を定めるわけではなく、まずは法律の上位の国際的な条約の改正が必要になります。
道路交通に関する国際的な条約は「ジュネーブ条約」と「ウィーン条約」の2つで、日本は「ジュネーブ条約」を批准しています。
国際的な条約が改正されたのちに各国が批准する条約に沿って法律を改正するため、日本でいうとジュネーブ条約の改正内容に沿って道路交通法の改正が行われます。
現在、国際的には緊急時や限定条件下でなくなる場合に人が運転できればよいとされていて、完全自動運転であっても運転を代われる運転手が必要です。
ジュネーブ条約では、自動運転に関する改正はされませんでしたが、非拘束的文書として採択され、これを受けて日本では2020年4月1日に道路交通法と道路運送車両法が改正されました。

②インフラ整備

インフラ整備に関しても、意思決定してから効果を発揮するまでに時間がかかることから自動運転実現に必要不可欠と言えるでしょう。
現在は限定地域、限定条件において自動運転が実現されつつありますが、条件なしにどこでも自動運転ができるようになるには、自動運転に対応した走行空間の確保やインフラからの自己位置特定支援、専用走行空間が確保されるまでの合流支援などが必要だと国土交通省は検討しています。
さらに、そのインフラの安全性を担保する技術基準などの国際標準化を進める必要もあります。

③消費者に受け入れられるか

自動運転が実現されたとしても、消費者がそのクルマを購入したいと思えるかも大切です。
技術が進歩して生活が便利になることは大変うれしいことですが、その利便性の代償は現時点で「責任問題」、「ハッキングリスク」、「価格」だと考えられます。

・責任問題について

現在の道路交通法では、自動運転条件から外れる、または緊急時に運転者が直ちに確実に操作できる状態でなければならないことを義務付けています。
「直ちに確実に操作できる状態」とは、自動運転条件から外れる際の自動運転からの運転交代や、事故に遭遇しそうになった際に回避行動を行える状態であることを指します。
道路運送車両法で自動運転状態などを記録する自動運行装置の搭載と運転者の状況監視のための運転者記録も義務付けられ、事故となった場合に自動運転システムに不具合がなかったか、運転者が操作できる状態だったか確認できるようになります。
現在の法律では、自動運転中のシステムの不具合が確認できない場合は、運転者が直ちに確実に操作できる状態でなかったかと判断される可能性が高いと考えられます。

・ハッキングリスクについて

自動車技術の電子化・高度化により、通信を活用したソフトウェア更新によって自動車の性能変更ができるようになりましたが、そういった技術の進歩によるリスクも問題となります。
そこで、道路運送車両法の改正によって、ハッキング対策としてセキュリティ、ファームウェア更新に関して保安基準が設けられました。
自動運転においても、一般のスマホアプリやWebサイトと同様の脆弱性が発見されることがあり、ハッキング実験もされているほどです。
自動運転システムがハッキングされてしまうと人命に関わる事故に直結する可能性がありますので、消費者感情への影響は少なくありません。

・価格について

自動車の価格は車種やメーカーによって異なりますが、自動車事故対策機構の事故を未然に防ぐ技術を評価する「自動車アセスメント」で公表されたレベル2の運転支援機能を搭載した乗用車の価格は200万円~500万円程度です。
現在、レベル3以降の自動運転車の正式な価格発表はありませんが、運転支援機能より高機能なセンサーを数十個と搭載するレベル3以上の自動運転車はレベル2より高価になることでしょう。

4-2.海外と日本の実現可能性の違い

世界各国の交通整備によっても実現時期や実現可能性が異なると考えられます。
日本と自動運転の実証実験が盛んなアメリカ、そして日本と同じく左側通行のイギリスを比較しましょう。

・面積の違い

アメリカは圧倒的な国土を誇り、広々とした道路が特徴です。アメリカと比較して日本とイギリスは国土が小さく、細い道路が多いという特徴を持っています。
有効活用できる土地面積の違いは、自動運転専用道路の実現に影響を与えると考えられます。

・車道と歩道の区別の有無

アメリカとイギリスの多くの道路は歩道が整備されていて、車道は車両(自転車を含む)、歩道は歩行者と区別されています。
しかし、国土交通省によると日本の歩道整備率は道路全体の15%程度と極めて低く、住宅街や主要道とつながる細い道のほとんどに縁石などで整備された歩道は存在しません。
車道と歩道が区別されている道路が多い国とそうでない国では整備するインフラの質や量も異なるため、実現時期の遅速が予想されます。

4-3.まとめ

多くの方が、自動運転は技術的な進歩によって実現できると考えがちですが、自動運転の実現には法律を整備すること、自動運転に適した環境を整備すること、多くの人が利用したいと思えることなど、技術的ではない課題が多くあります。
技術の進歩と技術的ではない様々な課題が解決して初めて、レベル4以上の自動運転が実現させることができます。
技術以外の課題が解決するまでは、自動運転の利用に比べて人が運転する機会の方が圧倒的に多くなるため、運転者が交通ルールを守り、事故の予防に努めなければなりません。

5.交通ルールの遵守率を高める「AI-Contact」

自動運転の実現までは自動車を運転する「人」が交通ルールを守って運転する必要があります。
AI-Contactは従業員が交通ルールを守って運転しているかを見える化して、教育が行えます。
交通ルールを守り、事故を予防しましょう!

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