交通事故鑑定士の保田です。私はこれまで述べ50件以上の交通事故映像を鑑定し、裁判用の資料を作成してきました。
報道になるような大きな事故なども専門家として取材を受けることがあります。
煽り運転などの報道も増え、需要が高まっているドライブレコーダーの映像が証拠となる事案も増加傾向にあります。
しかし、ドライブレコーダーや防犯カメラなどの映像からどのように事実を立証していくのはご存じない方も多いでしょう。
映像を用いてどのように事実を立証していくのかご紹介いたします。
目次
1 交通事故の鑑定手法
・物理鑑定(工学鑑定)
上記は物理鑑定で速度や移動距離を算出するための公式です。
交通事故の鑑定として主流の鑑定手法は車両の損傷から衝突時の速度などを算出する物理鑑定となります。
多くの鑑定人、鑑定事務所が物理鑑定にて衝突時の状況を鑑定しています。
しかし、物理鑑定は衝突時の状況しか判断できない欠点もあります。
ドライブレコーダーや防犯カメラなど映像証拠がない場合は、損傷個所からエネルギー量や摩擦係数などを用いて衝突時の事実を立証できます。
・映像鑑定(光学鑑定)
映像鑑定はドライブレコーダーが普及してから用いられるようになりました。
事故前後の道路状況や車両の動き、事故直前から衝突まで細かく特定することができます。
映像を専門に事故鑑定している鑑定人は非常に少なく、未だに確立された鑑定手法がありません。
物理鑑定人が映像鑑定をすると科学ではなく憶測や個人の感想が羅列されるため、業者の選定が非常に重要となります。
映像鑑定の欠点は映像に記録されていないものは鑑定できない、複雑な鑑定条件があるなど課題が残っています。
2 映像による交通事故鑑定のメリット
・記録
事故被害に遭われたり、当事者になった場合、人身事故では実況見分調書を警察が作成します。その際、ドライブレコーダーなどの映像記録がない場合、当事者の記憶で作成されます。
記憶より記録の方が事故状況の立証がしやすく、記憶による主張を覆すことが可能です。
・事故に至るまでの双方の動向が可視化できる
映像記録があれば、衝突時や接触時以外の事故に至るまでの車両同士の動きを可視化することができます。
争点が回避可能性だとすると、映像上相手を確認できたタイミングと速度を割り出すことで回避が可能か否かなど判断できる材料となります。
事故が発生する原因は衝突時や接触時にあるわけではなく、それ以前に存在します。
事故発生に至るまでの車両位置などを映像から鑑定することで、本来の事故原因が判明します。
3 映像鑑定の手法
実際に映像鑑定はどのように鑑定しているのか、弊社の鑑定手法をご紹介いたします。
① 映像の確認と争点の把握
お送りいただいた映像から事故状況を確認し、弁護士の先生が考える裁判の争点を把握いたします。
鑑定経験豊富な事故鑑定士が判例を元に有利となる項目をピックアップしてご提案する場合もございます。
② 主な鑑定手法
映像は光の反射を記録しているため一般的な光学と数学を用いて数値を算出いたします。
詳細な車両位置を特定する場合は事故を記録したドライブレコーダーと同一のドライブレコーダーを用意し、方眼紙を撮影して三角関数から数値を特定いたします(特許取得)。
規格物(ナンバープレートや横断歩道・中央線)が撮影した方眼紙を通して何センチに撮像されているかを数値化し、その数値を用いて事故当時の車間距離や車線のはみ出しの程度などを特定していきます。
特許以外の鑑定方法ですと、光が直進する性質を活用したり、映像・画像内に対象物が撮像される場所を固定し経過時間から速度を算出することもあります。
「この対象物の付近に位置しているように見える」、「この車線内に位置しているように見える」などの個人の主観や感想など根拠のないものは書面に掲載せず、必ず理由が説明できる方法で鑑定を行っていきます。
③ 誰もが再現できる手法を用いる
鑑定する上で最も重要なのが、再現性があるかどうかです。
専門的な知識だけで主張しても、裁判官や相手方の弁護士がその知識を必ず理解できるかわかりません。
専門的な知識を押し付けるのではなく、誰もが再現でき、理解できる内容で事故状況を解説いたします。
光学も数学も義務教育課程で学習する内容で数値を算出しています。
4 まとめ
ジェネクストではできるだけわかりやすく、誰もが再現できる鑑定書の作成に努めております。
事故の映像を持っていましたら、弁護士を経由して映像鑑定ができる鑑定人に依頼し、記憶ではなく記録に基づいた事故状況を確認しましょう。